【残酷表現あり】とある宰相の転落劇・1(ナルサッハ)

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 けれど父も母も、里の大人は皆その人を「可哀想だ」と言う。  神様に愛され、その力を使うと対価を求められるのだという。人が神に払う対価は、とても過酷だ。沢山の加護を受けたユーミルもまた、絶頂期を最後に加護を失って身を滅ぼした。神の最初の子すら、多くの人に恵を与え続けてやがて死んでしまった。  だからこそ、人の手で出来る事を神に祈ったりしない。過剰な恩恵を求めてはいけない。  エルは皆、それを分かっている。  それでも一度でいいから会ってみたいと思う。神の子アルブレヒト。その人に会えたら、何かが変わるような気がしているんだ。  夜明け前、薄暗いはずの世界がとても眩しくて、僕は目を覚ました。 「ネメシス、起きなさい!!」  母の声に眠い目を擦って起き上がった僕は、様子の違いに身を固くした。 「すぐにここから逃げるのよ!」  強引に腕を引かれ、姉や妹も一緒になって外に出た。  外は、真っ赤な炎が昼みたいに辺りを赤くしていた。 「父さん……」  呟いた僕に、母はグッと奥歯を噛んだ。それでも笑って「後からくるわ」と言って走り出した。  森をドンドン奥へ。入ったことのないほどの深さまで入っていく母に不安を覚えたけれど、立ち止まる雰囲気でもなかった。 「兄さん……」 「大丈夫、行こう」     
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