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不安がる妹の手を引いて、僕は何日も森の中を進んだ。
思えばあの時、父はもう死んでいたのかもしれない。盲信に取り付かれ、欲深い祈祷師に踊らされた東の町の住人がエルの森を襲い、多くの戦士が死に、多くの人が逃げ惑い路頭に迷った。
エルの悲劇と後に呼ばれるこの事件は、僕の大切で穏やかな時間と家族を奪い去っていった。
母は帝国に助けを求めず、隣国のラン・カレイユへと逃れた。帝国に愛する人を殺されたのだから、当然だったのかもしれない。
急いで逃げたから、なにも持ち出せなかった。食べ物もなかった。
それでも小さな農村や町で助けを求めた。そしてすんなりと受け入れられた。
惨めかもしれない。馬小屋で寝起きをして、粗末な食事をして、お礼にと働いたけれど労働は辛かった。
それでもちゃんとフォークやスプーンがあり、木の器を使い、母子で寄り添って眠れた。僕は今が惨めに思えたけれど、これはまだ真っ当だったんだ。
そんな中で親切にしてくれる農場主なんかもいた。部屋をくれて、食事もくれて。
でも何故か、部屋は離された。母と姉は同じ部屋で綺麗で、僕と妹は二人で質素な部屋だった。
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