断罪(ナルサッハ)

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 怖くなって、手を離した。あんなもの、今更見たくない。あんな光、今更見せられても苦しい。あの場所には帰れない。あそこは眩しすぎて、綺麗過ぎて、今の私は異端でしかない。  蔑みの中、闇の中がいい。醜い体も心も許される。どれほどの欲望も飲み込んでくれる。だから貴方が墜ちてくれるのを待った。貴方が墜ちて、私を求めてくれたのならば私は悦んで迎えに行った。そして私と貴方、二人で仄暗くとも過ごして行けた。  絶望した。この人は人に近くなろうとも、神の子だった。残酷なまでの光を放つ、眩しい存在だ。そこにあるだけで人々を希望に導く、そんな……そんな、光の王なのだ。 「ナル、私はお前を恨んでいない。五年の間、私はお前を感じていた。あれが、お前の受けた地獄なのだろ? お前こそ、私を恨んで」 「違う! 私は……私は貴方に同じものを感じて欲しかった。絶望して、心を壊して、他を恨み、憎み、救われない絶望に墜ちて欲しかった。そうすれば! そうすれば、貴方は私のものになると……」  なると、思ったのだ。化け物の愛を、受け入れてくれると。壊れた人形でもいい、側にいたかった。私だけを求めるものが欲しかった。だって、そうだろ? 誰がこんなもの、愛してくれる。受け入れてくれるんだ。     
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