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ナルサッハも首謀者として最も重い罪状が下されたが、当人は既に死んでいる。しかも、生きながらに焼死したのだ。
中には「晒すべきだ」と主張した者もいたがアルブレヒトが断固拒否した。彼をこんなにしたのは、そもそもがこの国だ。腐った主流派がいなければ、今頃彼は側にいて、今回の争い自体なかったはずなのだ。
それに、己の変わり果てた姿に絶望したのも知っている。死んで尚、彼を人前に晒す事だけは拒んだ。
それでも公に墓を残す事はできなかった。そうしていたら、きっと荒らす者がある。
それに、アルブレヒトは彼を側においておきたかった。いつでも会いに行ける場所にいたかった。
中庭の木立の下。二人でよく空を見上げ、風を感じ、来るはずの未来を語り合った場所。そこに身内だけで彼を弔い、小さな墓を建てたのだ。
「とりあえず、やる事を終えましたよナル」
柔らかく微笑み、墓石の隣りに腰を下ろす。そこにナルサッハの魂はない。それでもそっと撫でる真新しい石碑からは、何かを感じていられそうだった。
「おかしいですかね。お前はここにいないのに、私はお前の亡骸を手放せなかった。妙な気持ちです、失ってから……私はお前を求めている」
失う事はとっくの昔に分かっていた。そうするのが王としての責務であり、私情を挟んではならないのだと。
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