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救済(ナルサッハ)
気がつくと、私はあの地獄に舞い戻っていた。暗く、朝も夜もない闇。冷たくどこかかび臭い石造りの部屋に手錠をつけられ、壁に拘束されている。
『嫌だ……いや! 誰か、助けて!!』
死んだ事は理解している。けれど死んでまで、この地獄に繋がれるなんて思っていなかった。
必死にもがき、苦しんでガチャガチャと音を立てるナルサッハの元に、毎夜ソレはやってくる。そしてあの地獄の再現を行うのだ。
助けてと、飽き足らずに口にしながら思うのは裏切った主君の、最後の顔。泣いてくれていた。こんなに酷い事をしたのに、私の為に泣いていた。
あぁ、貴方を裏切り、多くの不幸を生み、多くの人を殺した私にはこの地獄がお似合いだと言う事か。ここで魂が擦り切れるまで叫び、もがき、あの男に犯されて、消えて行けと言うことか。
諦めろ、相応のことをしたのだ。思っても、叫ぶ事を止められない。泣く事を止められない。助けを求めてもがいて、胸の中にあるたった一人を呼んでいる。聞こえるはずはないのに、誰にも見える事はないのに、止められないのだ。
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