救済(ナルサッハ)

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 伝わってくるものは、昔よりずっと弱い。それでもこの人の心に、暗さや憎しみがないのを感じる。こんなにしたのに、まだ許されている。 『許さなくていいのに、どうして……。苦しんだでしょ? 許せなかったでしょ? 憎んだでしょ? なのにどうして、貴方はこんなにも優しくあれるのですか』 「私とて、昔のような無償の優しさなど捨てましたよ。けれど、お前の事を憎んだ事はなかった。お前の事を思うといつも、助けに行けなかった不甲斐ない自分を思い苦しかった」  労りの手が、体を撫でる。そこから、楽になっていく。心地よくて、温かくてたまらない。木漏れ日みたいな光に包まれる。  この温かさが欲しかった。この優しさが欲しかった。得られないと思い込んで、嫉妬した。この人の優しさを受け取るベリアンス達が、憎くなった。この人を、私だけのものにしたかった。  相応しく無いくせに独占欲ばかりが肥大したのだろう。転落したのに、それでも上にある貴方に手を伸ばしていた。欲しかった。貴方の特別に、私はなりたかった。  なれないと、思い込んだ…… 「ナル、私はあの五年間を恨んでいません。むしろ、お前の苦しみを知るようでたまらなかった。こんなに苦しい時間を過ごしたのかと思うと、助けられなかった事を苦しく思いました」     
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