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それでも、楽になったのかもしれない。心の中の重みがふと、軽くなった気がした。
「すまない、ナル。私はもっと早く、お前から聞けばよかった。手をこまねくのではなく、もっと強引に聞き出して、抱きしめて、拒まれても手を離さなければよかった」
『我が君……』
「お前がどれだけ私を拒み、罵っても甘んじて受けていれば、何かが変わっていたかもしれない。お前を気遣うフリをして、私はお前の痛みを受け入れる強さがなかったんだ。唯一の友だったのに、弱い自分を克服できなかったんだ。すまない、ナルサッハ。弱い私を、許してくれ」
伝わる心が、震えて泣いている。人らしくなったアルブレヒトの剥き出しになった心が伝わる。哀れみなんてない、後悔と悲しみ。優しさとは違う、弱い自分への苛立ちと、強くなった今。
『……私も、弱い。貴方に醜いと思われたくなかった。醜い私が貴方の側にいることが、苦しかった。化け物と白い目で見られる事に、耐えきれなかった。こんな私が貴方の側に居続ける事に、貴方に恋い焦がれている事に、私が耐えきれなかった。知って、欲しかった。墜ちて欲しかった。そうすれば、側にいられると……勝手に思い、信じて会話する事を断ち切ったのです』
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