救済(ナルサッハ)

7/11
前へ
/174ページ
次へ
 怖かったのかもしれない、この人からの蔑みが。そんな事はないと思いながらも、信じ切れなかった。周囲のあからさまな奇異の目が、蔑みが、己の変わり果てた姿が目を濁らせたのかもしれない。  こんな自分を、誰も愛さない。そう、思い込んでいたんだ。  直接聞けばよかった。会話を拒絶するのではなくて、問えばよかったんだ。そうしたら、もっと何かが変わったのかもしれない。 『貴方が愛しかった。貴方の友でも、臣でもなく、唯一になりたかった。穢されきって、見た目も変わり果ててしまったのに、それでも貴方に恋い焦がれていたのです』  激情に、卑屈さが混じっていた。受け入れられないなら、壊そうと思った。愛されたいけれどもうそこに登れないと思ったから、落とす事しか考えられなかった。  死んでようやく、自分を知るだなんて。なんて馬鹿らしい。遅すぎた感情が涙になる。魂だけなのに、泣いているのだと自分で感じられる。  その時、ガサリと闇が揺れて暗がりが歪んだ。ビクリと震えそちらを見た私は、ランランと光る二つの目を見てすくみ上がった。  あいつが来たんだ。あいつが! 「ナル?」 『い……や……。いや、嫌だ! 嫌だ来るな!! もう、もう止めて! もう犯さないで!もう止めて!!』 「ナル!」     
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

381人が本棚に入れています
本棚に追加