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怖かったのかもしれない、この人からの蔑みが。そんな事はないと思いながらも、信じ切れなかった。周囲のあからさまな奇異の目が、蔑みが、己の変わり果てた姿が目を濁らせたのかもしれない。
こんな自分を、誰も愛さない。そう、思い込んでいたんだ。
直接聞けばよかった。会話を拒絶するのではなくて、問えばよかったんだ。そうしたら、もっと何かが変わったのかもしれない。
『貴方が愛しかった。貴方の友でも、臣でもなく、唯一になりたかった。穢されきって、見た目も変わり果ててしまったのに、それでも貴方に恋い焦がれていたのです』
激情に、卑屈さが混じっていた。受け入れられないなら、壊そうと思った。愛されたいけれどもうそこに登れないと思ったから、落とす事しか考えられなかった。
死んでようやく、自分を知るだなんて。なんて馬鹿らしい。遅すぎた感情が涙になる。魂だけなのに、泣いているのだと自分で感じられる。
その時、ガサリと闇が揺れて暗がりが歪んだ。ビクリと震えそちらを見た私は、ランランと光る二つの目を見てすくみ上がった。
あいつが来たんだ。あいつが!
「ナル?」
『い……や……。いや、嫌だ! 嫌だ来るな!! もう、もう止めて! もう犯さないで!もう止めて!!』
「ナル!」
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