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断罪(ナルサッハ)
数年ぶりに再会したアルブレヒトは、もはや神の子ではなかった。瞳には人としての強い意志が宿り、手にした剣は間違いなく他を殺める力を持っている。
ナルサッハはゆっくりと近づいた。アルブレヒトは拒まなかった。こちらが丸腰なのは知っているはずだ。ナルサッハは武力を持たないから。
触れられる位置に来て、手を伸ばした。赤黒く焼け爛れた手でそっと、白い頬に触れる。五年の陵辱に耐えたとは思えない肌の艶。地獄を知ったとは思えない強い瞳。あんなめに合ってまだ、この人は気高いままだ。
『ナル、お前は私を恨んだかい?』
「?」
恨んだ? 違う、憎しみばかりではない。私はこんなになってもまだ、貴方に恋い焦がれた。貴方に触れたかった。貴方の側にいたかった。貴方は……綺麗過ぎた。
「お久しぶりです、我が君。とても、良い目をなさいますね」
「ナル」
「私を、恨みましたか?」
問いかける、それにアルブレヒトは首を傾げる。そして、首を横に振った。
途端、流れ込むのは懐かしい故郷を思い出す風と光。温かく柔らかな、忌々しいまでの光だった。
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