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を楽しそうに見つめている。
そんな一日であった。
水曜午後、主治医田中先生の往診の日である。
車から降り、杖をついて老人には遠い庭をゆっくり歩いていると庭木の手入れ中の嘉吉と対面した。
「こんにちは、お初にお目にかかりますな、私は中村さんの主治医田中というものでございます」
眼鏡をかけ白衣白髪の老紳士、医者であることはすぐにわかる身なりである。
「これは初めまして、拙は嘉吉伝助と申すもので・・・」
と嘉吉がまた口ごもっていると老紳士の眼鏡の奥が一瞬白く光った。
「嘉吉・・・さんですね、この庭、貴方お一人で?」
「ええ、まあ」
「素晴らしい、貴方は庭師さんですか?」
「あの・・・そのう昔・・・ちょっと・・・」
老医師はばつの悪そうな嘉吉の応えを察して話題を切り替えた
「お暑いですのでこまめに水分補給を」
と応対して玄関へ向かって行った。
嘉吉は少し考えたがあまり深くは悩まない性分なので
「偉くなくとも~正~しく生きる!」とすぐに庭仕事を続けた。
「異常は・・・体にはありませんな」
「それは、どういう意味、ですの?」
「そうですな、言うなれば心が赤い、とでもいいましょうかな?」
「赤い?心が?一体ど
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