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ういうことですの?そんなこと聴診器でわかりますの?」
「この田中玄徳!何十年貴女の主治医を務めておるとお思いですか?」
普段はとても穏やかな老医師が珍しく声を荒げた。
「わかり、ますのね・・・流石、お医者さま」
「なりませぬぞ、いや一人の人間として、医者として、そして貴方方ご夫婦の友人として、その選択肢は正しくない、とっくの昔に武士の世は、終わっているのですぞ」
「どうかしら・・・ね」
「偉くなくとも~正~しく生きる!」
嘉吉の決まり文句が二人の息詰まる心のやり取りをスパッと切り裂いた。
「では、ここいらで失礼します」
「ごきげんよう・・・」
よろよろと田中医師は中村宅をあとにした。
庭先で田中は嘉吉にこう話しかけた
「貴方のその『偉くなくとも正しく生きる』の『正しく』とは一体どんな決まりがあるのですかな?」
「ええと、そのこれは拙の父から受け継いだ先祖代々の家訓みたいなものでその時拙が正しい、と思ったことをしてきただけです」
「では『生きる』に対して『死ぬ』については?」
「拙にはわかりかねます、正しく生きて天命を待つ、それだけです」
「左様ですか・・・嘉吉さん・・・貴方は・・・いや・・・水分補給は
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