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ばら髪はさくさくと面白いように刈り取られた。
「頭はこれで、次は髭ですね」
「ひ、髭は自分でやり申す」
「良いんですよ、私、好きで、いつも主人の、やっておりましたから」
言われるがままに嘉吉はじっと座ってそのままで、頭と顎だけはこざっぱりとした。
老女はささっと新聞紙を丸め、一旦風呂場へ行き、それから丸められた新聞紙を持って裏の勝手口から外へ出た。老女の自宅の風呂は薪風呂式であった。
老女によって窯に薪と新聞紙がくべられた。
「まもなく湧きますのでお風呂に入って体を丁寧にお洗いなさい、衣服は夫のお古ですが、肌着・下着は新品ですのでこれをお召しなさい、貴方は夫より大柄なので少し小さいかもしれないですが」
「よろしいのでありますか?そんな大切なもの、ご主人が気を悪くされたら・・・」
「いいんです。夫は十年も前に他界しました。もう誰も着られる者の居ない衣服達
なのですよ。タンスにいっぱい。捨てられずに、ずっと仕舞っておいたものです」
「かたじけない・・・」
嘉吉は火の番を申し出、老女は食事の支度を始めた。しばしあと、老女が風呂の湯加減を見て
「お入りなさい、古い衣服は脱衣所へ、夫の衣服も置いておきま
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