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れた握り飯であった。
「これはかたじけ・・・では風呂敷に包んで下されば助かります」
「承知いたしました」
そして嘉吉は斧を背負い先端に風呂敷包みをひっかけ、力強い足取りでいずことなく立ち去っていった。
翌朝の八時過ぎ、嘉吉は斧と空になった重箱、沢山の薪を背負ってやってきた。
「おはようございます、これは昨日の、せめてものお礼でございます」
「まあ、これは助かります。」
「これから拙が小さく切って窯にくべやすく致しますので」
「その前に・・・どうぞ朝餉をご一緒に」
「かたじけない」
二人は一緒に朝食を取ってのち、嘉吉は持ってきた沢山の薪を斧で割り始めた。
筋骨隆々の大男の上段から豪快に振り下ろされる斧。
「偉くなくとも~正~しく生きる!」
嘉吉はその言葉を繰り返しながら薪割りを続けた。
そして嘉吉は家長がいなくなって手入れされなくなっていた庭木の手入れを申し出た。これがまた見事な腕前で素人の手習いどころではない美しく整った庭へと生まれ変わった。
この嘉吉という男、ただの物乞いではなかったことをその庭木が証明した。
「偉くなくとも~正~しく生きる!」
これが嘉吉の決まり文句だった。
土曜日の昼、孫
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