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僕は待ってる。
彼女の次の言葉を。
彼女からどんな言葉が発せられるのかを。
僕からの告白にどんな返事をするのかを。
僕は彼女に告白をした。
とても良くある、ありふれた言葉で力強く、想いを込めて。
「結局ストレートに想いを告げるのが1番いい」
先輩からのアドバイスに僕は正直に答えた。
今まで彼女がいた時期、ましてや好きな人に想いを伝えたことなんてない。
そんな僕が告白をした。
今はとても寒い季節だというのに僕の体はとても熱くなっていた。
待っているといっても恐らくそれほど時間は経っていないだろう。
もしかしたら1分も経っていないかもしれない。
でも僕には5分にも10分にも、もっと時間が経っているように感じた。
音が僕達を包み込む。
風が木々を揺らす音。
踏切が誰もいないのに線路を下ろす音。
彼女はずっと黙ったままだ。
少し困ったようにも見えた。
もしかしたら僕からの告白に戸惑っているのかもしれない。
もしや、どう告白を断ろうかと考えているのかも。
そう考えているとなんだか申し訳ない気持ちになってきた。
「急にごめんね。」
僕は立ち去ろうとした。
これ以上彼女を困らすわけにはいかない。
こんな僕と2人でずっといるのもきっと嫌なのだろう。
そんなことで頭が一杯になりかけた時、
僕の右手から冷たい感触がした。
それは彼女の手だった。
彼女の手はとても冷たかったが、頬は赤くなっていて熱そうだ。
「さ、寒いから・・・さ・・・」
それが僕からの告白を受けた彼女が最初に発した言葉だった。
「・・・帰ろっか。」
自然と僕の口から言葉が出た。
恥ずかしさと戸惑いから反射的に逃れようとしたのかもしれない。
想いを伝えようと決めていたこの場所には2人バラバラにやって来たが、帰りは2人同じ速さで出た。
彼女の手はまだ僕の手と繋がったままだ。
帰りながら僕は1つの不安が頭に浮かんでいた。
結局彼女の返事はなんなのか。
第三者から見るとなんだか告白は成功に見えるが、はっきりと良い返事を貰ったわけではない。
告白は成功したようなものだと僕が1人浮かれていてはいけないような気がする。
僕は彼女に想いを伝えようと決心したみたいに、もう一度決心してから彼女に聞いた。
「ねぇ、僕はまだ君からちゃんと返事を貰ってないんだけど」
「うるさい」
また頬が赤くなっていた。
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