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「……教えてくれて、ありがとう」
人間と魂の関係は理解していた。
人間の魂の記憶は、肉体が死んでも魂に刻み込まれたまま残る。そして、次の世にも影響を与える。だから、彼女の苦境も前世で犯した罪の影響なのだろうと考えていた。……けど、改めて詳細を知ると、これまで感じることのなかった理不尽さに気が滅入ってしまう。
命を与えられた魂は、そのつど異なった思考や価値観を持つようになる。それは完全な“個”であり“他人”であるにも関わらず、魂だけは“一つのもの”として不変に受け継がれていってしまう。言ってしまえば、他人の犯した罪を強制的に肩代わりさせられているようなものだ。
そんな境遇を考えてしまうと、彼女を前にした時と同じように胸の奥が痛みを訴えてしまう。
「君は随分とあの人間の事を気にかけているようだな。だが、あまり人間に入れ込むな。翼が黒く染まってしまうぞ」
ボクたちは感情というものが人間ほど豊かではない。他人を思うにしても、それは事務的で機械的な反応で、同胞を気遣うなんてことはほとんどない。それなのに、彼はボクの様子を異常に感じたのか、淡々と忠告してくる。それほどボクは、自分たちにはありえない顔をしていたのだろう。
「……ああ、そうだな。肝に銘じておくよ」
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