破れ鍋に綴じ蓋

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「だから、別れればいいじゃないの。レシオンとは。どうせまたしばらく帰ってきてないでしょう? 何ヶ月? そろそろ五ヶ月ぐらい?」 「そうなんだけどさー」  店の前を掃除しながら、通りかかった花屋のソフィーと話ながら、食堂の看板娘リリアはぼやいた。 「いくら全然帰ってこないとはいえ、レシオン、仕事でいないだけなのに別れるっていうのもさぁ」 「いや、半分遊んでるでしょあいつは」  毎度毎度の会話に内心うんざりとため息をついきながら、ソフィーは続ける。 「傭兵だから仕事でこの町を離れることがあるのはわかる。でも、仕事が終わってすぐに戻ってこないのは、あいつの放浪癖じゃん? ってか、傭兵兼絵描きってなんなの、マジで」  一言も言い返せない友人の発言に、一瞬言葉に詰まる。 「でも、レシオンの絵、綺麗だよ?」 「知ってるよ。なんかえらい高値で取引されることもね」  それがまた癪なのよねぇー、とソフィーがぼやく。 「でも、リリアの誕生日にもあいつ帰ってこなかったんでしょ? 傭兵の仕事が終わってるのは、客の情報から確定してんのに」 「それは、うん。ちょっと、むかついてる」 「レシオンに普通のこと期待するだけ無駄なんだってば。普通に一緒に居られる人がいいなら、別れて次を探しなよ。リリアならすぐに見つかるし。ってか、帰ってこないっていう愚痴を毎度毎度聞かされるこっちの身にもなってくれる? そりゃそうじゃん、としか言いようがないわけ、レシオンの場合は」 「うーん、ごめんね」  確かに逆の立場になったとしても、期待するだけ無駄でしょ? と返す気はする。レシオンはそういう人だ。 「うん、わかった」  覚悟を決めてリリアは頷いた。 「一週間後の収穫祭までに戻ってこなかったら、そしたらお別れする」  決意に満ちた目でリリアがそう言った時、 「あんた、いつまで掃除してんの!」  店からおかみさんの声が飛んでくる。 「あ、はーい! すみません」  リリアは慌てて返事をし、 「ソフィー、引き止めてごめんね! ありがとう」 「あー、うん、まあ頑張って」  ばたばたゴミをまとめているリリアに片手を振り、別れてからソフィーは思った。まあ、今回も別れないんだろうなぁー、と。
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