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オレはされるがままで、人を刺してしまった恐慌と、美月は大丈夫なのかという心配と、息苦しい気持ち良さがぐちゃぐちゃに混ざり合って、おかしくなりそうだった。
「あぁ……このときをずっと、ずぅっと待ってた……!」
酸欠でぼぅっとしてきた頃、美月はようやく唇を離した。
銀糸のような唾液が垂れてきたのを赤い舌がペロリと舐め取って、上気した頬の紅と相まってひどく艶めかしい。
彼女は心底愛おしそうに、腹に刺さったナイフを指で優しく撫でながら、口を開いた。
「話したことあったかな? わたしね、事故で両親を失ってるの。目の前で両親が理不尽に死んでいったとき、わたしはそんな死に方は嫌だって強く思った。……だからわたしね、どうやったら幸せに死ねるかって、いつも考えてたの」
「……それが、何だって、いうんだ」
「まだ分からない? ふふ……でもそんな鈍いこーくんも好き」
初心な少女が恋の告白をするように、美月は血の気が失せ始めた白い頬を再びほんのりと紅く染めて、
「つまりね、わたしは、大好きな人──こーくんに殺されたかったの」
うっとりと恍惚に酔うように、訳のわからないことを告げた。
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