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しかし、期待していたぬくもりも柔らかさもなく、代わりに首元にヒヤリと冷たい感触と少しの圧迫感がして、ジャラッという金属音が鳴った。
「……ん?」
違和感に思わず目を開くと、細くて赤い革のベルトが首に巻き付いていて、ベルトには長い鎖が付けられていた。
鎖の先を追うように見上げると──天井の中央あたりに繋がっている。
「なっ……なんだよ、これ……」
「康介くんが逃げないように。これでわたし達、ずっと一緒だね」
美月の笑顔は普段と何ら変わりがない、清楚で素朴なそれで。
まだニタリとかニヤリとか、そういう気持ち悪い表情でいてくれた方が何倍もマシだった。
「なんで、こんな……こんなことしなくたって、オレ、逃げないって」
鎖と首輪を外してもらうため、何とか笑みを貼り付けて説得を試みると、美月はうん、と頷いた。
オレのこと、信じてくれたのか……?
「康介くんのことは信じてるけど、わたしが不安なの。最初はちょっと不便かもしれないけど、大丈夫。わたしがちゃんとお世話してあげるから。ご飯だってもっと美味しく作るし、お風呂だって入れてあげる。康介くんのためなら何でもしてあげる。だから、このままでいてね。……もし逃げたりしたら、わたし、どうなるかわからないからね?」
──逆らったら、きっと恐ろしい目に遭う。
目の前にいるのは、小さくて華奢で武器も持っていない、ただの女の子のはずなのに。
半ば本能的に恐怖を感じ、コクコクと首を振ると、
「ん。康介くんはおりこうさんだね」
美月は幼い子どもにするようにオレの頭を優しく撫でて、嬉しそうにオレの両手へと手錠を嵌めた。
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