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このときを、ずっと待ってた
ベッドの上で寝返りを打つと、オレの動きを追って鎖と手錠がジャランと音を鳴らして、いつもその音で目が覚める。
どうやって取り付けたのか、鎖は天井の中央から三メートルほど吊り下がっている。手足を伸ばせる程度の自由はあるが、部屋の外へ出るどころか壁にも触れられない、絶妙な長さだった。
鎖の位置に合わせてか、ベッドも中央に置かれていた。
可愛い恋人だと思っていた女から、ペットか何かのように扱われ始めたあの日から、どれだけの時間が経っただろう。
テレビや携帯、時計、カレンダーに至るまで、”現在”が分かるものはすべて部屋から撤去された。
カーテンは閉め切られ、窓は新聞紙とガムテープと吸音材が貼られ、この部屋の外の様子は何一つわからない。
初めの頃は、一日三食出る食事の回数を数えていたが、本当に一日で三食なのか、オレの時間感覚を狂わせるために遅くしたり早くしたりしているんじゃないか、そう疑い出すと数えるのを無意味に感じて止めてしまった。
「あ、こーくん、起きた?」
オレが目覚めたことに気が付き、美月はとことことベッドへ近付いてきた。
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