このときを、ずっと待ってた

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 美月はいつの間にか、オレのことを”こーくん”と呼ぶようになった。  あの日の宣言通り、食事から風呂から口に出せないようなことまで何もかも世話をされて、呼び名すら幼い子どものようになって、オレがまともに生きていくための尊厳はほとんど破壊されていた。 「おはよう、こーくん。こーくんが起きたら食べられるように、ご飯作っておいたよ。今日はねぇ、オムライス!」 「……ああ」 「今チンして持ってくるから、待っててね」 「……うん」  返事をしないと何をされるかわからないので、反射的に相槌だけは何とか返す。  それでも美月は喜んで、軽やかな足取りでキッチンへ向かった。 「じゃーん。ケチャップで愛の告白を書いてみましたー!」  しばらくして、美月はほかほかと湯気を立てるオムライスを皿に載せて持ってきた。  オムライスには確かに、”I ハートマーク こーくん”と書かれている。ハートマークが“LOVE“の代わりなのだろう。Tシャツなどでよく見る表現だったので何とかわかった。  ちなみに、あの日から彼女が作る食事は、スプーンで食べられるものばかりで、食器もすべてプラスチック製だ。 「はい、こーくん。あーん」     
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