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「……そりゃあ、欲しいよ」
「正直に言えてえらいえらい。でも、あーげない。こーくんはずっとわたしとここで一緒にいるんだから。ね?」
美月は鍵を上着のポケットにしまい、意地悪く笑んだ。
その姿は、あの日までのオレが見れば小悪魔的と評したかもしれないが、今のオレからすればただの悪魔だった。
どうしてオレがこんな目に遭わなければならない。
もう我慢の限界だった。
──そうだ。鍵があるなら、奪えばいいじゃないか。
相手は丸腰の小柄な女だ。今なら距離も近い。
この鎖を利用すれば……!
鎖の鍵というエサをぶらさげられて、オレの思考はほとんど理性を失っていた。
「じゃあ、わたしはご飯の後片付けしてくるから、良い子で待っててね?」
美月がそう言い残して、食器を両手に抱えて背を向けた瞬間。
オレは鎖を彼女の首に巻き付け、力の限りに引っ張った。
美月が持っていた食器が、派手な音を立てて床に落ちる。
「ぐ……ッ」
かなり力を込めているのに、美月は抵抗しなかった。
「──あは、」
あろうことか、笑ったのだ。
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