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それは、今から傷つけられる部位の話をしているというよりは、まるで夕飯のお肉は鶏のささみがおすすめだよ、とでも言っているような何気ない話し方だった。
「ね、こーくん。一生のお願い!」
「そっ、そんなこと……できるわけ、ないだろ……!」
両手を合わせて懇願してくるその様は、普段なら高級ブランドバッグを強請られても買ってやりたくなるような可愛らしさで。
だからこそ、オレは動けなかった。
「……もう。こーくんのいくじなし。じゃあいいよ。はい、これ持って」
しばらく待ってみてもオレが望み通りに動かないと知るや、美月はバタフライナイフを開いてオレに握らせ、ガムテープでぐるぐる巻いて固定した。
「これでよしっと」
満足そうに一つ頷いて、美月はオレを押し倒した。手錠が邪魔をして、起き上がることはできない。
「な、何する気……」
「こーくんは寝てるだけでいいから。……せーのっ」
美月は勢いをつけ、抱き着くようにしてオレに覆いかぶさった。
手の中のナイフが、ズブリと柔らかいものを貫いた嫌な感触を伝えてくる。
「み、美月……?」
「こーくん、大好き……んっ」
その体勢から、美月は陶酔するように愛の言葉を囁き、オレの顔にそっと手を添えてキスをしてきた。
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