ハジマリ

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ハジマリ

ふと気が付くと暗闇の中、ぽつんと少女は佇んでいた。 『貴女様が…、………ですね?どうか…ど…か………て…さい…』 誰かが少女に呼び掛けてくる。声は所々途切れてよく聞き取れない。ただ、切実な声だと言うことだけはわかった。 「何?よく聞こえないよ…」 周りを見回すも、どこまでも深い闇が続いている。いつの間にかこんな場所にいたのかと不安が襲う。声の主は判らぬものの、声だけはどこからか響くように聞こえていた。 『どうか…どうか……助けて下さいませ…過去を…未来を…!!』 今度ははっきりと聞こえた。大人のようで、子供のような声が。シャラン、と鈴の音が響いたその瞬間、闇を切り裂くように光が溢れ少女はその眩しさに目を閉じた。 ピピピピ…ピピピピ… 目覚まし時計の音に意識が一気に覚醒する。カーテンの隙間から朝日が差し込み眩しさに寝起き特有の瞼の重さに何度か瞬きをして、朝が来たのかとようやく思考が追い付いた。 「ん~…なんか変な夢を見たような……」 目覚ましを止めて体を起こして大きく背伸びをしたあとに欠伸をひとつ。 いつもと変わらない朝。身だしなみを整え、朝食を食べ終わると鞄を持って母親にいってきます!と声をかけて家を出る。     
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