不真面目な運転手

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不真面目な運転手

“不真面目な運転手”。 会社の仲間や客からそう揶揄されながらも、今日まで四十年間この仕事をこなしてきたタクシー運転手の藤原。 そんな藤原にとってもこんな時間帯に客を乗せる事は、長い経験の中でとても珍しい事だった。  勤務時間も終了間際の、午前一時三十五分頃。 キャメルのトレンチコートに白色のワンピース、そして足元は薄桃色のパンプスという出で立ちの少女は、どう考えても十代のように藤原の目には映った。 少女はタクシーに乗り込むと、 「どこまで行きはるの?」 そう聞く藤原に、聞こえるか聞こえないかというような小さな声で行き先を伝える。 その行き先を聞いて、藤原は何か嫌な予感を覚える。  関西弁の藤原に対して、少女は訛りの無い標準語。 少女が他県から来たのだと、藤原は察する。 そして一人だという事から、少女はここまで特急できたのだと推測し、この白浜駅に止まる特急の最終の時刻が二十三時頃だという事を思い浮かべ、頭の中でそれらの情報を結び付ける。 長年の経験は、藤原に色々な情報を自然と身につけさせていた。  「お嬢さん、この辺りの人やないな。どっから来はったん?」 ふと、藤原が尋ねる。すると少女は、 「東京です」     
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