2人が本棚に入れています
本棚に追加
と再び小さな声で答えたが、その声は微かに震えていた。
その目が泳いでいる事を、藤原はバックミラー越しに確認する。
そして少女のその言動が、藤原が覚えていた嫌な予感を確信へと変える。
東京から来るにしても、ここに止まる特急の最終の時刻はやっぱり二十三時頃。
それは変わらない。
二十四時間営業のマンガ喫茶やインターネットカフェ、カラオケなどもただでさえ少ないのに、ましてや少女は地元じゃなく県外の人。
それらの店の場所など、余程じゃないと知らないだろう。
その時間から今までの、およそ二時間半。
一体、それ程の長い時間を、少女はどこで何をして過ごしていたのだろう?
まさか、ここの広い待合室でずっと……?少女の事を思い、藤原は心配になる。
そんな藤原に、
「あの、発車しないんですか?」
ふと、少女がそう尋ねる。その目はやはり、尚も泳いだまま。
藤原は我に返って、
「おっちゃん、周りから“不真面目な運転手”って呼ばれとんねん。ちょっと喋ってからやないと、動けへんのよ」
そう適当に笑って見せる。それに少女は少し首を傾げるも、
「へえ、関西の人って会話が好きなイメージがあったけれど、やっぱりそうなんですね」
と少し納得したように頷く。
そんな様子の少女に少し安心したのか、
「おっちゃんな、藤原明大っていうねん」
と、にっこりと笑いながら話し始める。
最初のコメントを投稿しよう!