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「せやけど親は、それがいつしか過度な期待に変わってしもうてても、気付けない事が多いんや。あんたがそれに苦しんどっても、気付けないかも分からん。せやけど、これだけは分かったって。あんたの親御さん達は、あんたを苦しめたり追い詰めたりするつもりはないで。何故かて?あんたが好きやからや」
藤原の言葉に、希美ははっと目を見開く。
そんな希美を見て、
「せやからあんた、気付けない親御さん達を許したって?自分の名前を一字ずつくれる程、あんたの事愛してんねんで?好きなんやで?そんなん、よっぽど幸せな事やと思うで。そんな大切なあんたがいなくなったら、親御さん達悲しむで?そして何もしてあげるられなかったと、自分達を恨んでまう。話聞いとる限り、あんた親御さん達嫌いなわけではないやろ?」
藤原は更に、そう声をかける。
自分の言葉選びは、さて正しかったのだろうか?
場合によっては、それに対する希美の反応が、今後の動向全てを物語る事になるのかもしれない。
そしてそれを左右するのは、紛れもない、今の自分の言葉だろう……。
直後、藤原の体に緊張が走る。
すると、
「嫌いなわけない。……大好きです」
そう口にすると、希美は小さく肩を震わせて泣き始める。
希美は泣いているも、その言葉を聞いて、藤原は安心する。
そして直後に、藤原はつかの間の緊張から解き放たれる。藤原は、希美を見つめる。
希美は泣きながら、大好き、と何度も繰り返している。
それはまるで、繰り返す事で自分自身にその事実を言い聞かせ、思い出させているかのように、藤原の目には映った。
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