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『金の斧 銀の斧』というイソップ寓話がある。
自分が湖に落としたのは普通の木の斧だと、湖の女神に告げたところ、正直さをほめてもらい、ご褒美に金の斧をもらえる、というストーリーだ。
光江はこれまで、この話を信望していた。
正直に、真面目に生きることがすべてであった。
しかし、と光江は思う。そう、そんな考え方を今こそ捨てるときなのではないか、と。このカエルはひょっとして、女神さまからのプレゼントなのだ、そうだ、きっとそうなのだ。と、思うようにした。
「今日は光江さん、なんだか、変」
仕事が終わって、更衣室で幸子にいわれて、光江はぎくりとした。
「なにが?」
「顔が明るいもの。いつも鉄で塗り固めたような、灰色の顔なのに。今日は白っぽい」
「き、気のせいよ。」右手でカエルを握りしめる。「あ、明かりが違うからでない?」
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