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霧峰は舌打ちして起き上がった。洗面所に向かい、トイレのドアを開けると、ぎょろりとした目がこちらを見ていた。佐原は霧峰の腕を盾にして様子をうかがっている。霧峰はトイレの中にいる化け物に、不機嫌に問う。
「なんだ、こんな夜中に」
「くりこちゃんをころしたやつをさがして」
「言われなくても探す。何か手がかりでももってるのか?」
トイレお化けの目玉がぎょろりと回転すると、佐原の握りしめる力が強くなる。
「くりこちゃんは学校でいじめられてた。よくトイレでなきながら、落書きされたランドセルをふいていた」
「なんでお前はそこまで久里子とかいうガキに肩入れしてるんだ?」
「私はトイレにこもる女の子の味方」
なんなんだ、それは。
「とんだ正義のヒーローもいたもんだな。鈴音って名前に聞き覚えは?」
「聞いたことがある。くりこちゃんが嬉しそうに呟いてた」
日下部は久里子に接触していた。それは間違いないようだ。
「久里子はお前の存在に気づいてたのか?」
「気づいてない。私が話しかけたらみんな逃げてしまう。その子みたいに」
ぎょろりとした瞳が佐原を捕える。佐原はびくりと震え、ひきつった笑みを浮かべた。霧峰は問いを重ねる。
「最後にくりこを見たのは?」
「今日の昼。鼻歌を歌いながら髪をといてた」
「そうか。お前、どれくらいの範囲移動できる?」
「トイレやお風呂があるところならどこでも」
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