俊足婦警と花子さん

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霧峰は舌打ちして佐原を中に入れた。冬用の布団を放る。 「それしかないから適当に工夫して寝ろ」 「ありがとうございます!」 佐原がははー、と土下座する。霧峰はベッドに戻り、寝転がった。佐原は顔を上げてあたりを見渡す。 「改めてみると……すごいですね」  視線が壁に注ぐ。都内全域の地図に重ねあわされるようにして猟奇的殺人事件の新聞記事が貼られている。佐原は切断、腐食、などのグロテスクな用語と、陰鬱な写真にうへえ、とうめいた。 「よくこんな部屋で寝れますねえ、夢見が悪そう」 「……」 やかましいやつだ。霧峰は彼女に背を向け、ベッドに寝転がる。佐原のおしゃべりは止まらない。 「その水晶、寝る時もつけてるんですか?」 「うるさい、さっさと寝ろ」 「あの、その前にトイレお借りしてもいいですか」 「勝手に使え」  霧峰が洗面所のほうを指さすと、佐原が急いで立ち上がった。 「ありがとうございますっ」  しばらくして、悲鳴が聞こえ、洗面所から佐原が飛び出してくる。 「せ、せんぱい」 「これ以上騒いだらたたき出す」 「トイレお化けが!」     
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