俊足婦警と吸血鬼

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三枝きいろはぼんやりと天井を見上げていた。おなかが減った。いったいどれだけの時間この部屋にいるのだろう。のどが渇いた。鋼鉄のドアを見つめる。 きいろのほかに、二人女の子がいる。二人とも疲れた様子で、一言も話さない。うなだれていたそのうちの一人がふらりと立ち上がった。何かをぶつぶついいながら、きいろに近づいてくる。その眼を見て、きいろは息を飲んだ。人殺しの目。後ずさるが、後ろは壁だ。きいろに飛び掛かってきた女の子に、もう一人の女の子が噛みついた。悲鳴をあげる。噛みつきあう二人の体がめきめきと変化し始めた。きいろは震えながらそれを見ていた。 「やめて……」 そのつぶやきは誰にも届かず、密室に耳をふさぎたくな るような叫び声と血しぶきがあふれた。 ★ 信号待ちをしている車の中、霧峰は地図を広げる。
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