俊足婦警と花子さん

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鈴音が残念そうに微笑む。 「そう。じゃあね」 カシャン、とブランコが鳴る。 「あ」 どこに住んでいるのか聞く前に、鈴音は植え込みの向こうに消えていた。 ここは警視庁の食堂。昼時とあって混んでいる。 「幼女誘拐事件、ですかあ。嫌ですね」 佐原がテレビのニュースを見ながら言う。食べているのは焼きそばだ。 「歯に青のりついてるぞ」 佐原の向かいに座っている赤井が指摘し、ラーメンをすする。 「あっはっは」 「あっはっはじゃない。大体、なんでお前そこに座ってんだ」 「いやあ、一人で食べるの寂しいじゃないですか。霧峰先輩はお昼休みどっか行っちゃうし」 「あいつと飯食ってもマズそうだけどな」 ――そう言えば、霧峰先輩は人間のごはんは食べないのかな。 固形物は食べないとか言ってたけど。佐原が考えていると、赤井が口を開いた。 「そういやお前、荒巻(あらまき)係長の話聞いたことあるか」 「荒巻係長? トクハンの係長さんですか? ないですねえ」 「ないのかよ。疑問に思わねえのか?」 「うーん、トクハンの存在自体疑問ですけど、霧峰先輩基本的に世間話とかしないので」 「世間話とかいうレベルか?」 赤井が呆れ返った声で言う。佐原はえへへ、と笑い、スマホを取り出した。     
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