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妹の言葉に頭を振るう、家族が普通だなんてのは見掛け倒しだった。現に妹は今まで聞いたことのないような人物を当然のように肯定している。やんわりと世界が滅ぶ。なんて言っている母だってそういうものだと受け入れている。
「父さん」
せめて父だけは無事であってくれと未だ新聞を読み続けている父に縋るような視線を向けた。
「そうだな。みんなでトランプでもするか、お前たちが子供の頃よく遊んだだろ」
新聞を畳んで何を言い出すかと思えばトランプ!?
「いやいや!何でトランプ!?世界が終わるっていうならもっとすごいことしようよ。…ってそうじゃなくて!父さんまでどうしたのさ」
占いなど誰にでも当てはまりそうな事ばかりを言っているだけだと馬鹿にしている父が、あろうことか世界が終わるだなんて正気の沙汰とは思えないことを自然に受け入れていることが異常だ。今日は平日。夏休みの俺らなら兎も角、父は仕事のはずなのに!
「すごいことねぇ。お母さんは家族みんなで普通の日を送れればそれでいいわ」
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