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「あの、その鏡があった病院ってどうしてなくなったんですか?」
この質問にはこれまで淡々と話していた先生も少し黙った。私は先生が何か話すのをじっと待つ。
「・・・誰にも言わないわね?」
先生の言葉に私は頷きながら、はいと答えた。
「実は、医療ミスがあったらしいの。そのせいで患者さんが1人亡くなったって話よ。原因はわからないけれど、遺族の方に訴えられたとかで話が広まってね。今まで通院してた人たちもみんな他所へ移ったらしいわ。それで経営が回らなくて・・・。」
「・・・亡くなった患者さんって・・・・。」
突然、台所でピチャンっと音がした。私は驚いて顔をあげる。その時携帯を耳から離してしまった。台所を見に行くと、蛇口が閉まりきっていなかったのか雫が垂れていた。私は蛇口を閉め直し、携帯を耳へ当てた。
「・・・・・・で。」
先生の声は聞こえない。代わりに若い女性の声がした。何か話しているようだが、よく聞こえない。周りでノイズの音がしているからだろうか。私は恐怖よりも好奇心が勝っていた。女性の声に対して
「なんですか?」
と強めに言った。すると、ノイズがピタリと止んだ。
「それ以上調べないで。」
はっきりとした声だった。そこで始めて私は恐怖に震えた。しばらく呆然としていると、電話口から先生の声が聞こえた。
「もしもし?大丈夫?」
「あ、すいません、ちょっと電波が悪いみたいで・・・・。」
などと適当なことを言って私は電話を切った。あれ以上通話していたくなかったのだ。それ以来私はその事について考えるのを辞めた。あの声の女性が怖いといのもある。でもそれだけじゃない。聞こえたのだ、女性の声の後ろに、赤ん坊の泣く声が。
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