○追憶編⑤~本物の人~

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 結果は、落選……つまり特選賞候補止まりだった。 『生命(いのち)のささやき』という題名も、私の名前も永遠に呼ばれることはなかった。 「最後に、各賞の候補に上がった方々のお名前をご紹介します……」  賞の候補者が数名ずつ次々に発表される、その中に代表として澪ちゃんの名前が読み上げられたのが唯一の救いだった。  私はこの時、(これから先いくら曲を作っても、私の曲は世の中に出ることはないだろう……)と変な確信をした。 「ステージの上にいる人は、本物の才能がある人で、手が届かない本物の人なんだろうな……」  私は澪ちゃんと別れた帰り道、電車の窓にそう呟いた。 「……でも、音楽は音が苦になってはいけません。音を楽しまなきゃね」  私は高校2年最後の文化祭に向けて頑張ることにした。  来年は受験生なので軽音楽部にとっては最後のライブ……  その中で私が作った曲を歌おうと澪ちゃんが言ってくれたのでライブに比較的合うアップテンポの曲を演奏することになっていた。  そして最後の曲は「みんなが知ってる『翼になりたい』にしない?」という澪ちゃんの発案で、激しい系希望2人としっとり系希望2人で意見が別れたが…… 「賛成~『翼になりたい』なら小学生の時に習ってハモリまで分かるし」という私の賛成意見により最後の曲が決定した。  そしてそう言った手前、私も一緒に歌うことになってしまった。  最後の文化祭ライブのお客さんは、去年よりかなり増えていて満員という感じだった。  澪ちゃんが私の曲を歌っている間、私は涙が止まらなくて……  弾きながらだから拭けないし、鼻水も出てたから、きっとかなり怪しい人だと思われただろう。  そして最後の『翼になりたい』……  曲が始まり澪ちゃんが歌い出すと、盛り上がっていた会場は、その綺麗な声に聞き入るように静かになった。  そしてサビ……私と澪ちゃんのハモリ……  一緒に歌っている間に今までの色々な思い出が浮かび、本当に楽しかった。 (私達の歌が少しでも誰かの希望になりますように)という想いが届いたのか……間奏の間にハンカチで涙を拭う人もいた。  そして2番が始まり、最後のサビ……
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