○追憶編⑥~初恋~

1/2
前へ
/66ページ
次へ

○追憶編⑥~初恋~

 高校2年の12月、私は高校の近くの進学塾に通い始めた。  初めての塾での英語の授業……  周りは通い慣れている子ばかりのようで、いくつかのグループができていた。  私が入ったクラスは丁度、12月から新しい先生になったようで授業の最初に簡単な自己紹介があった。 「はじめまして。篠田(しのた)一幸(いっこう)です」 (あ、名字が同じ……でも読み方が違う……) (『しのた』って読み方もあるって、名前の授業で自分の名字調べた時に載ってたけど、本当にいたんだ……) 「あ……あの、『しのた』は言いにくいので『しのだ先生』でいいです。えっ……と……ちなみに年は36歳です」 (うわ~丁度20歳年上だ……全然見えない)  先生は見た目では20代前半といった感じで、声も高めなので年齢との違和感があった。  メガネをかけていて少しオドオドした感じなので、人が良すぎて損するタイプにも見えた。 「いっこ~先生?……って珍しい名前だね」 「もしかしてオネエ系ですか?」  自己紹介の名前に盛り上がる教室内…… 「先生って結婚してるんですか?」  誰かがからかうように聞く。 「お見合いは何度かしたことあるんだけど……なかなか上手くいかなくて……///」  と照れながら苦笑いする先生。 「先生って絶対Mでしょ?」 「えーとM……で……は……ありません///」  爆笑の中、最初の授業が始まった。  一瞬でいじられキャラを確立してしまった先生は、罰が悪そうに授業を進めていたが…… (あ……寝癖……)  一生懸命教えようとする後ろ姿に寝癖を発見してしまい、20歳も年上の男の人にこんなことを言うのは失礼だが(とてもかわいい)と思ってしまった。  その気持ちがただの親近感なのか、恋なのかまだ分からなかった。 (そういえば先生って誰かに似てる……ちょっと天然で優しいお兄ちゃんて感じの……)  その夜私は懐かしい夢を見た。  もう忘れかけていた初恋の夢……
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加