○追憶編⑦~プレゼント~

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「パー?」  途端に教室が爆笑に包まれた。  パーなのは私だった。  この時の話が後々私に意外な幸せを運んでくれることになるとは思っていなかったけど……  年明け、家に大きな封筒が届き、年始のご挨拶とともにある冊子が入っていた。  全国音楽振興会からのもので去年受賞した全作品をまとめた冊子だった。  特選賞候補の楽曲も掲載されていて、友達の歌詞と自分が作った曲の楽譜が本に載っているという事実が夢みたいで……  思いがけない誕生日プレゼントを貰った気がして本当に嬉しかった。  私は暇さえあればカセットテープに録音したものを聞いていた。 「やっぱり先生の声聞くと一番安心する」  私は先生の声が好きだった。  優しい性格が滲み出たような声……  私は元々人の声というものに敏感で、テレビで誰かが喋っている声などが、顔や名前を見る前に、これは誰の声か分かるという変な特技を持っていた。  もし警察に声紋判定係という部署があるのなら就職したいと思う程……というのは大げさだが。  小さい時に見ていたアニメで(なんか好きだな~)と思うキャラクターの声を後に調べてみたら、みんな同じ女性声優さんだった。  いわゆる『声フェチ』というやつかもしれない。  私はテープを繰り返し聞いては恥ずかしがり、顔を覆ってモジモジしてしまった。  そして相合傘を書いて(名字が同じ漢字だから結婚しても変わらないんじゃ……)と気付き、床をゴロゴロしてしまった。  新学期が始まり、受験まであと1年ということもあって英語の受講を週2に増やした。  塾でも来年に向けて志望校を仮に決める面談があるそうで……私は2月になったある日、篠田先生との面談のためだけに塾に向かった。  私はその日、熱があった。  でもどうしても先生に会いたかったから必死で隠した。  これはもう完全に恋だ。  赤い顔で志望校の相談をし、仮の志望校一覧を埋めていく。  やるべきこと全てが終わってから……
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