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まずは去年の優秀賞、最優秀賞の紹介があり、曲が流れ「先輩はすごいなぁ」と溜め息をついた後、
「続いてはインストゥルメンタル部門優秀賞の発表です……」という言葉に息を飲む。
その後は夢の中にいるようでよく覚えていないというか現実にいる感じがしなかった。
なんだか心の奥を見られて恥ずかしいような嬉しいような不思議な気分だった。
「投稿した名前……学校の名前のアナグラムにしといてよかった」
中学に入ってから推理漫画や暗号好きになった私は、高校の名前をアルファベットにして入れ替え、即席のアーティスト名を作っていた。
その数日後、自宅に電話がかかってきた。
「先日のラジオ聞きました~突然ですが『空を見上げて』をある番組の詩の朗読のBGMとして使わさせていただきたいのですが……よろしいでしょうか?」
「……え?…………あ、はい……どうぞ……あんな曲でよろしければ」
夢の中にいるのではないかと耳を疑った。
私は今まで誰かに頼られたり何かを依頼されたことがなかったので、少しでも何かのお役に立てたのが嬉しかった。
ピンポーン……
そんな私の元に届いたのは、またしても一通の封筒。
応募コンクールの受賞を祝福してくれた文章とともに挟まっていたのは、優秀賞の副賞である音楽商品券だった。
もちろん使えるはずがない。
バイトをしたことがない私にとってそれは始めて自分で稼いだお給料代わりの特別な宝物になった。
そして、その数日後……
高校に着いた私を待っていたのは、ある意外な依頼だった。
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