12人が本棚に入れています
本棚に追加
○追憶編③~文化祭~
「私がキーボード!?」
文化祭の企画募集の締め切りが迫ったある日、
友人である澪ちゃんが突拍子もないことを言ってきたので、思わず教室で叫んでしまった。
「お願い春香……前に音楽室でピアノ弾いてたことあるでしょ?」
両手を合わせてお願いポーズをする友人。
「いいけど…………私、下手だよ?」
確かに音楽室のピアノを弾いたことが一度だけあるが……
実は私は優秀賞を受賞したことをまだ誰にも言っていなかった。
自分から言うのは自慢しているみたいで、なんとなく恥ずかしくて……
ある日のお昼休みに澪ちゃんと音楽室に行った時、急にピアノが弾きたくなって、昔覚えた大好きな作曲家の曲を弾いた後……
家のピアノで初めて作曲した『空を見上げて』をこっそり弾いた。
「何その曲?」と聞かれるかドキドキしたが、気付かれなかったことが逆に嬉しかった。
澪ちゃん曰く、中学からの友達3人と軽音楽部を作って文化祭も出ようという話しになったが、部の設立には5人必要でメンバーが1人足りないらしく……
澪ちゃんがボーカル。友達3人がギター、ベース、ドラムをそれぞれ担当しているが、キーボードの担当がいないのでピアノが弾ける私はどうか(?)ということになったらしい。
私は未来の軽音楽部メンバーとして文化祭に出ることになった。
各自練習し、まだ正式な部にはなっていなくて音楽室は使えないので、初めてスタジオというものに入って音合わせをした日……
後で注意点を振り替えるための反省材料にと自分達の演奏を録音したものを聞いてみたが、中々にひどい出来だった。
初めての文化祭ライブで挑戦した曲は、流行りのアップテンポな曲とドラマのエンディング曲。
一生懸命練習し、ようやく形になってきて文化祭当日を迎えたが……
本番に弱い私はガチガチに緊張し、舞台袖で昔のピアノ発表会の事を思い出していた。
たくさん練習して直前までは弾けていたのに本番の緊張で指が動かなくなり、挙げ句の果てに途中で止まってしまった悪夢のような発表会……
「どうしよう……絶対間違えちゃうよ……」
ステージに上がる本番直前……固まっている私に気付いた澪ちゃんは、私の背中をポンッと叩き「まあ、楽しんでこ~」と笑った。
最初のコメントを投稿しよう!