○追憶編④~挑戦~

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 次の日、 「澪ちゃん聞いて! 『生命(いのち)のささやき』が特選賞候補だって~!」  全国音楽振興会から送られてきた封筒に入っていた信じられない結果を澪ちゃんに見せた。 「すごいじゃん! 授賞式?……で正式に発表されるの?」 「そうみたい……すごいよね? 澪ちゃんが歌詞書いてくれたおかげだよ~」  封筒には、授賞式の日時と会場の案内図が同封されていて私達は興奮気味に顔を見合わせた。  候補者何人かの中から正式に特選賞になれるのは1組……それが誰になるかは当日発表されるらしい。 「あれ? 春香、今日進路指導じゃなかった?」 「そうだった! 行ってきま~す」  クラス担任との進路相談はすぐ終わった。 「あの……私、音大を受験したいんです」 「音大? なんでまた?」  担任の先生の反応は、母親と同じで冷ややかだった。 「…………音楽が好きだから…………」  私は作曲コンクールに応募していることを言いたかったが、万が一のことを考えてやめた。 「これからは福祉の時代だぞ~ここなんてどうだ?」  大学のパンフレットをいくつか渡されたが、目には映っても記憶に残らなかった。  そして、いよいよ作曲コンクール結果発表当日……  私は、憧れの音大の夏期講習で貰ったテレホンカードをお守り代わりにお財布に入れて家を出発した。 「行ってきます」
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