本当に欲しかったものを、思い出したのです。

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神様は首を傾げ、少し上を向いて考えてから、長いひげを触りながら答えました。 「神は平等だ。どの色も好きだ」 「そう。でも悲しいときは赤とか黄色とかすきにならない?」 「そんな気持ちになったことはない」 「そう。じゃあ、僕は青が好き。かみさまも青好き?」 「神は平等に何色も好きだ」 また髭を触って答えると、子どもは青いペンキを重そうにずるずると引きずってきました。 そしてその中に手を入れると、真っ青になった手で、真っ白なシャツに手形をぺたぺた付けました。 「何をしている! 絶対に汚してはいけないのだぞ! それは子どもであっても守らなければいけない!」 怒った神様は地団駄を踏みました。 けれど子どもはきょとんとしています。 「神様の好きな色なら、汚したことにならないよ」 ぺたぺたと手形をつけたTシャツは、いつしか真っ青に染まっていました。  まだペンキが乾いていない青いシャツを、子どもは頭からかぶりました。 ところどころ青くなった子どもはとても嬉しそうです。 「かみさま、ありがとう! まるで青空みたいなシャツです。ぼく、このシャツが世界で一番すきになりました」
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