本当に欲しかったものを、思い出したのです。

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「……」 「かみさまが、ずっと雨がふらなかった村に雨をはこんでくれてから、ぼくはずっと青がすきでした。三日三晩つづいた雨の後の青空、ぼくはわすれません。ぼくはかみさまがだいすきです」 まいにち、まもってくれてありがとうございました。 ぺこりとお辞儀した子どもは、青い足跡をぺたぺた浸けながら走って村へ帰っていきました。 神様は、人間に称えられるのが好きでした。忠誠心を見せてもらうのが好きでした。 自分を奉る人間が好きでした。自分が世界で一番偉く感じられるからです。 なので、日照り続きで、土も農作物も人の心も乾ききっていたこの村で、神様はちやほやされたくて、雨を降らせました。 ただの自分の欲望を満たすためでした。 Tシャツだってそうです。神様は、自分が気持ちよくなりたいがために人間に送ったのです。 でも村の人々は、街を救った神様だからとそのシャツを大切にしてしました。 あの子どもも、この神様だからと神様の好きな色に染めたのです。 神様が一滴垂らした涙は、真っ白なTシャツに小さなシミをつくりました。 小さな、小さな海は、Tシャツを汚したのでしょうか。 神様はTシャツを抱きしめると、身体を震わせました。 本当に欲しかったものを、思い出したのです。 子どもが無邪気に青空を見上げられる村。 それが神様が誇れる自分の力でした。 神様は二度と忠誠心を求めたり、威張ったりすることはありませんでした。 そんな神様を、いつまでもいつまでも人々は尊敬し、奉ったのでした。 終
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