8人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
「かみさまが、ずっと雨がふらなかった村に雨をはこんでくれてから、ぼくはずっと青がすきでした。三日三晩つづいた雨の後の青空、ぼくはわすれません。ぼくはかみさまがだいすきです」
まいにち、まもってくれてありがとうございました。
ぺこりとお辞儀した子どもは、青い足跡をぺたぺた浸けながら走って村へ帰っていきました。
神様は、人間に称えられるのが好きでした。忠誠心を見せてもらうのが好きでした。
自分を奉る人間が好きでした。自分が世界で一番偉く感じられるからです。
なので、日照り続きで、土も農作物も人の心も乾ききっていたこの村で、神様はちやほやされたくて、雨を降らせました。
ただの自分の欲望を満たすためでした。
Tシャツだってそうです。神様は、自分が気持ちよくなりたいがために人間に送ったのです。
でも村の人々は、街を救った神様だからとそのシャツを大切にしてしました。
あの子どもも、この神様だからと神様の好きな色に染めたのです。
神様が一滴垂らした涙は、真っ白なTシャツに小さなシミをつくりました。
小さな、小さな海は、Tシャツを汚したのでしょうか。
神様はTシャツを抱きしめると、身体を震わせました。
本当に欲しかったものを、思い出したのです。
子どもが無邪気に青空を見上げられる村。
それが神様が誇れる自分の力でした。
神様は二度と忠誠心を求めたり、威張ったりすることはありませんでした。
そんな神様を、いつまでもいつまでも人々は尊敬し、奉ったのでした。
終
最初のコメントを投稿しよう!