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駅前にある私達の行きつけのお店『居酒屋〇』まで歩きながら、私の大好きな貴女の横顔を盗み見ていれば、貴女の肩に空からふわりと白いものが落ちてきた。
「・・・・あ、雪だ」
「どうりで寒いわけですよね。もう冬かぁ」
寒い寒いと言いながら、今だ秋物のコートを身に纏う彼女は肩を竦めた。
私は雪国生まれのくせに寒がりなので、もうすでに内側にモコモコとした暖かい素材の入ったコートを着込んでいる。
ポケットの中もモコモコしていて暖かいから、私の両手は今もそこに入っている。
「宏実さんのコート暖かそうですね。
私も次はそういうの買おうかなぁ」
無邪気にそう笑う彼女の言葉に、
“ お揃いにしたい “ なんて頭に思い浮かぶ。
けれど、彼女には言わない。
この想いは自分の中で封印すると、そう決めたから。
「ね、宏実さん。寒いから、お邪魔していいですか?」
「え?なに・・・・あっ!」
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