常々思う

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 フレンチプレスはある意味簡単だ。粗挽きにした豆を容器に入れて、お湯を注いで四分待つだけ。豆十五グラムにお湯百八十ml。簡単だからといって、お湯を雑に注いではいけない。容器の端を伝う様に、ゆっくりと注ぐ。徐々に徐々に。ひょっとしたら、フレンチプレスが一番コーヒーの素直な顔を見せてくれるのかもしれない。入れ方は手間が掛からないが、本質をつけるような気がする。出来上がりはカップにコーヒーオイルが浮いていて、微粉も混じるので、若干濁って見えるが、ペーパーやネルとは違った隠れている個性も引き出す様な。蓋をして待つ四分は至福の時だ。はたして、どんな顔を見せてくれるのか。  エアロプレスとサイフォンはまだ試行錯誤の段階だ。エアロプレスはエスプレッソの様な濃厚で苦味が効いた顔。サイフォンは雑味なくまろやかな顔。サイフォンは良い感じになってきたが、エアロプレスはまだまだだ。入れ方は簡単なのだが、それ故力加減が難しい。加減一つで顔が変わってしまう。まあ、努力も楽しいものだ。  結局、コーヒーは恋愛と一緒だと思う。全ては君の良い顔を見るために。  朝と晩。一日の始まりと終わりに、君の笑顔を見るために。僕は一日二回心血を注ぐ。それは、君との新しい一日の始まりと終わりが繰り返されることを願う、僕の大切な儀式。
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