5.タバコ

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部活にバイトにバンド、 そしてトモとの時間。 忙しい中でも どれも大切にし、 充実した日々を送っていた郁に 心配ごとが出来たのは夏休み少し前のことだった。 一学期末テスト期間中で 午後からトモの部屋で 2人で試験勉強をしていた時のこと 『あーーーー。もう無理。 休憩!』 『トモくん、明日は何教科?』 『2!だから何とかなるから ちょっと休憩しよう。』 『終わらせちゃってからの方が スッキリ休憩できるよ?』 『………ウン。そうだな。 もうちょい やる。』 そう言いながらも 集中力の切れたトモの試験勉強は 全く進まず 。 ダラダラして ポツリと 呟いた。 『あー。タバコ吸いたい。』 郁が 大きな瞳を見開いて じっとトモを見ていることに気付き シマッタという表情になったトモ。 それをみて 郁は 聞き間違いじゃなかった……と 一層 驚いた。 『トモくん、タバコって……。』 『いや、あの。 学校のヤツらだって みんな吸ってるし。』 『トモくんも?』 不安げな表情で問いかける郁に トモは咄嗟に嘘をついた。 『試しに1回吸っただけ!もう 絶対吸わない。』 ヤバイと思ったトモは 口数の少なくなった郁の顔をのぞき込むように 明るく 話しかけた。 『いーく。怒った? ごめん。 なぁ。ゴメンって。』 『………もう絶対ダメだよ? 野球も頑張ってるのに……。』 『うん!約束する!』 でも それ以来、 ときどきトモから タバコの匂いがする事に 郁は気付いていた。
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