5.タバコ

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トモ本人に聞けない郁は バイト先の喫煙者の大学生に聞いてみた。 『タバコっていつから吸ってますか?』 『20歳になってから。 って言いたいところだけど、もうちょっと前から。 内緒だよ(笑)。 郁ちゃんみたいなコでも 興味あるの?』 『ううん。興味があったり 試してみる気持ちが理解らなくて……。』 『そっちか。 カレシ?』 『……一般的に。』 『ハハ。一般的にね。 そうだなぁ。カレシ星工業高校だよね。 吸ってるヤツ 多いと思うよ。』 ……お友達が 吸ってた近くにいて トモくんにも 匂いがついたのかもしれない。 疑いたくない。 あまり 口出しすると 鬱陶しいって思われるかもしれない。 何よりも トモくんに嫌われたくない。 そんな想いから 郁は それをトモに言えず モヤモヤした気持ちを抱えていた。 だけど それは日に日に大きくなる。 夏休みに 部活の合宿に参加した郁を 駅まで迎えに来たトモから また タバコの匂いがした。 『トモくん、今日は 部活お休みだったんだよね。 何してたの?』 友達と一緒に居て、とか 外出して、何処かで匂いがついたんだ と思いたい郁は 祈るような気持ちで 質問したのに。 『今日は ずっと家で寝てた!(笑)。』 『……。』 『郁?』 『……タバコの匂いがする。』 『あ~(笑)。バレたか。 そんなに わかる?』 自分の服を クンクン嗅ぎながら 悪びれる様子のないトモの態度に 郁は もっと 悲しくなった。 『1回だけって、辞めるって言ったのに。』 『もうホントに辞める!』 郁は わかったと返事をし それ以来、この件には触れず トモを信じることにした。
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