5.タバコ

4/5
883人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
バンドの練習を終え ハルトと郁は いつも通り 2人で駅へ向かっていた。 『夏休み、ちょっと忙しくて 次の予定決められなくてごめんね。』 『うん。次のスタジオ練習は9月に入ってからでいいよ。 それにしても だいぶ 歌う時の 照れ がなくなったなー。』 『向井くんの厳しーい ご指導のおかげだね(笑)。』 『でもまだまだ。 ちょっとその辺で 歌ってみれば?』 『え。無理……。』 『路上はアレだけど(笑)。 ライブは やろうな。 あ。そうだ。これ、この前言ってたCD。 聴いてみて。』 『わ。嬉しい。ありがと~! 洋楽って ちゃんと聴いたことないの。 いま借りると返すの 遅くなるけど いいの?』 『いいよ。』 郁ちゃんとは 音楽の趣味がめっちゃ合う。 だからこれも気に入ると思う。 休み明けに感想 聞くのが楽しみだな。 電車を降り、改札を出てからも 2人で 音楽の話題で立ち話をし、盛り上がっていると 声を掛けられた。 『ハルト! そのコ、なに? どうして 連絡無視するの!?』 あーーー。もう。面倒だな。 そろそろトモが来るはずだから 郁ちゃんから 離れても大丈夫だな。 『はぁ。ゴメン。 郁ちゃん、もう迎え来る?』 『うん。 先に帰るね。』 ペコリと 2人に向かって会釈し 立ち去る郁を見送ってから ハルトは 振り返り、その娘に言った。 『もう やめるって言ったじゃん。』 『さっきの誰よ! なんで あのコは 会ってもらえるのに 私はダメなの!?』 『そういうンじゃないから。 っていうか、最初に言ったでしょ。 付き合う気は無いって。』 『でも……。』 『送るから。 こういうの、本当にやめて。マジで迷惑。』 泣かれても 罵られても この娘に対して 全く気持ちは動かない。 どの娘に対しても。 遊ぶ気すら 持てず、この娘も 切った。 郁ちゃんへの 気持ちを 自覚してしまってからだなぁ。 まぁ。 今のところ、自覚したからと言って どうこうしようって気は無いけど。 真っ直ぐな 郁ちゃんを見てると オレのしてる事って ……ナシだなって思えたんだ。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!