5.タバコ

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夏休みは 部活とバイトで忙しくしていた郁。 そんな中、今日は 久しぶりのデート。 郁は ウキウキとトモの家へ 向かった。 だけどそのウキウキは トモの部屋のドアを開けた瞬間 打ち消された。 『どうした?郁。 入らないの?』 『……タバコ吸ってた?』 『あーー(笑)。 まぁ いいじゃん。 郁がいるときは 吸わない。』 郁は トモの言葉と 部屋で喫煙してるということは ときどき 吸ってるとか そんなレベルじゃないんだって それが見えてしまい 信じようとしていた気持ちを粉々にされた気がした。 『そういう問題じゃないよ。』 泣きそうになりながら そう言った瞬間、 乱暴に ベッドに 押し倒され、組み敷かれた。 『ーーーっ! やっ!』 本気で抵抗しても 力で 敵うはずもなく 両手首をまとめて掴まれ ベッドの枠にガンっ!と押し付けられた。 自由を奪われた 郁が 痛みで 顔を歪めると トモには それが 拒絶に見え、余計に頭に血が上る。 『たかが タバコくらいでっ! 触られるのも 嫌になった?』 ……確かに私、タバコのことがあってから トモくんに 触れてなかったかも。 でも そうじゃないのに……。 それを うまく 言葉に出来ず 荒々しいトモの動きが 悲しくて ポロポロと涙が溢れる。 『……トモくん。 ホントに やだ。』 絞り出すように やっとのことで そう言った郁の声が届き トモは 郁から離れた。 『ゴメン。』 『……今日は 帰るね。』 乱れた服を整えることもせず 郁は トモの部屋を後にした。 恐怖は あとから 襲ってきた。 手首のアザに気付いた時にも。 怖かった。 すごく怖かった。 でも 大好きなトモくんを怖いって思いたくない。 私も 悪かったんだ。 それから 2人は お互いに謝り合い お互いが修復しようと努力したけれど ダメだった。
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