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なんて顔してんだよ。
『まだ 好きなんだ?』
『なにが?』
『トボケてもムダ。』
『……トモくんに言わないで。』
『言わないけど。』
『そうだよね。向井くんは言わないよね。
変なこと言って ごめんなさい。』
『そろそろ教えてよ。なんで 別れたの?』
『………。』
『腕のアザ。
トモがやったんでしょ?』
『………トモくんから 聞いてた?』
『カマかけただけ だったんだけど。』
絶対 明日、トモを問い詰めてやる。
腹の中で ムカつきを抑えていると
郁ちゃんが 慌てて否定する。
『違うの!
違う………。トモくんのせいじゃないよ。
きっと 向井くんが想像してるようなのとは違う。』
『暴力じゃないってこと?』
『うん。違う。ちょっとぶつけただけ。
私、すぐに青くなっちゃうんだよ~。
でももう消えたよ?ほら。ね?』
袖を捲り
自慢げに腕を見せる郁につられて笑ってしまった。
『ダメになったのはね、
考え方が 合わないって言われて……。』
『は?
例えば?』
話しにくそうにしながらも
ポツリポツリと話す郁は 今にも泣き出しそうだった。
『それどう考えても 郁ちゃんの方が正論じゃん。
キッチリしてて窮屈だとか
考え方が合わないなんて トモの言い訳。』
『でもね、私も 合わないって言われて納得したの。
トモくんのこと まだまだ大好きなのに
タバコのことがあって、気持ちが下がっちゃったのもホント。
トモくんから
もうムリだ、ごめんって言われて
私も ウン としか言えなくて。
だって トモくんに合わせようって
考えられなかったんだもん。』
吐き出すように
一気に 話して
肩を震わせ、声を殺して泣く郁に
かける言葉が なかなか見つからなかった。
好きな子が泣いてるの見るのって
悔しい。
アイツのことで泣いてるのが悔しい。
なんだこれ。
ダメだと 頭の中で 警告音が鳴っているのに
抱きしめたい衝動を抑えきれなかった。
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