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え。
ふわっと 優しく
包み込むように抱きしめるハルトの腕の中で
郁は頭の中が 真っ白になった。
えっと……。
そっと ハルトを押してみると
簡単に腕の中から 脱出 出来た。
泣いちゃったから 慰めようとしてくれたんだよね。
心配かけちゃった。
向井くんを見上げると
何か言いたそう。
少しの沈黙のあと
向井くんは いつもの 向井くんに戻った。
『大丈夫?』
『うん。ありがとう。
びっくりして涙 止まっちゃった(笑)。』
大丈夫?って……そういう意味じゃなかったんだけどな。
まぁ、いいか。
その方が変に警戒されずに済むし
結果オーライ。
っていうか 意外だった。
抱き締めたりしたら
拒否られたり 嫌がられたりすると考えていた。
郁ちゃんって 男性恐怖症とまでは行かなくても
男が苦手なのかと 思わせる反応をする時があるんだよな。
いや、でも
トモとは ヤッてたのか。
以前トモが 仲間内で自慢げに話してたし。
見知らぬ人が苦手とか?
この予想は 少し違う。
郁は トモとの一件以来、
男性が近くにいると少し怖いと感じている時期もあった。
でもそれは一時的なもの。
日常の中で 郁をときどき苦しめているのは別の経験。
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