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目を瞑ってしまった。
それ程に苦いブレンドを出された。
これは、淹れ間違えたかと思うような苦みに身体が震える。思わず大きな声を出しそうになる。
「なんだこれ」
ブレンドを淹れた若い女性はコチラをみて微笑む。
十代のアルバイトなのだろう。おそらくは見様見真似で何となくブレンドして淹れたのだろう。
運が悪かったと思いながら、地獄の様に黒く苦いブレンドを二口、三口と飲み進める。
進めていくうちに気が付く。
止まらない。
通常ゆっくりと時を楽しむためにコーヒーを飲むはずが、一杯直ぐに飲み終えてしまっているでは無いか。
「気に入って頂きましたでしょうか。宜しければお代り如何です」
若い女性店員はメニューを指さす。
お代り一杯無料ですと手書きで書かれたメニュー。
自分の舌を信じられないながらに、声を出さずに頷くと、女性店員は鼻歌を歌いながらミルを回す。
楽しそうに挽くものだなと。
豆の挽かれる音と香りに目を瞑った。
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